カテゴリ:遠い国から来たポー( 3 )

ハートライト/遠い国から来たポー

 
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心の中にあるハートライトをともそう。こどもの頃にみた夢の途中で。
もう少し眠らせて。自転車でお月様を横切っているところなんだから。
N-D-E.T.-E


ちいさなともだちができた。
手のひらに乗るほどちいさい。

ちいさなともだちはすぐに傷つく。
だから僕がちいさなともだちを守る。
たとえ、世界中が敵になってもだ。

ちいさなともだちの名はポー。
遠い妖精の国からやってきた。


Heartlight - Neil Diamond (*Inspired by the "E.T.")


"Heartlight" Written & Lyrics by Neil Diamond/Carole Bayer Sager/Burt Bacharach

Come back again
I want you to stay next time
'Cause sometimes the world ain't kind
When people get lost like you and me

I just made a friend
A friend is someone you need
But now that he had to go away
I still feel the words that he might say

Turn on your heartlight
Let it shine wherever you go
Let it make a happy glow
For all the world to see
Turn on your heartlight
In the middle of a young boy's dream
Don't wake me up too soon
Gonna take a ride across the moon
You and me

He's lookin' for home
'Cause everyone needs a place
And home's the most excellent place of all
And I'll be right here if you should call me

Turn on your heartlight
Let it shine wherever you go
Let it make a happy glow
For all the world to see
Turn on your heartlight
In the middle of a young boy's dream
Don't wake me up too soon
Gonna take a ride across the moon
You and me

And home's the most excellent place of all
And I'll be right here if you should call me
Turn on your heartlight
Let it shine wherever you go
Let it make a happy glow
For all the world to see
Turn on your heartlight
In the middle of a young boy's dream
Don't wake me up too soon
Gonna take a ride across the moon
You and me
Turn on your heartlight now
Turn on your heartlight now

 
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by enzo_morinari | 2014-06-11 04:49 | 遠い国から来たポー | Trackback

いちばん大事なもの

 
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 夕方、風向きがかわり、海側から潮の匂いをかすかに孕んだいい風が吹いてきた。テラスでプリント・アウトした望月新一氏の「ABC予想」の証明に関する論文、『Inter-Universal Teichmüller Theory Ⅳ: Log-Volume Computations and Set-Theoretic Foundations』を四苦八苦しつつ読みながらゴンチチの『いちばん大事なもの』を繰り返し聴いていたら、ポーがやってきた。いつもはクールなポーが鼻を鳴らし、甘えてくる。そっと抱き上げ、膝にのせた。食い入るように私の顔を見ている。まん丸で大きなふたつの瞳に見つめられるとドキドキした。ドキドキはしたがすごく幸せな気分だった。

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 あのとき、ポーはいったいなにを言いたかったんだろうな。なにを考えていたんだろうな。こんなとき言葉が通じたらいいのだが。でも、言葉は通じなくても、ポーの気持ちはわかる。それは私の考えていることとたぶんおなじだから。
 いちばん大事なもの    理屈ではない。利害や欲得でもない。「いちばん大事なもの」だとふと思えるような刹那の中に、たがいが「いちばん大事なもの」だと思えるような関係の中に、きっと幸福とやらはあるんだろう。

 ポーちゃん、あしたはなにをして遊ぼうかね?

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 ゴンチチ - いちばん大事なもの
 
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by enzo_morinari | 2013-05-29 10:36 | 遠い国から来たポー | Trackback

フィネガンズ・ウェイクを食べた犬

 
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KOFFの月に一度のスペシャル・セールで手に入れた『フィネガンズ・ウェイク』を読むにはうってつけの午後だった。

リラの花影が揺れる窓辺では水曜日の午後の野毛山動物園から飛来した42羽のクォーク鳥たちが「クォーククォーククォークダンテブルーノヴィーコジョイスクォーククォーククォークダンテブルーノヴィーコジョイスクォーククォーククォークダンテブルーノヴィーコジョイス」と3度鳴き、台所では年老いた大工の棟梁が鉋がけに精を出していて、夜にはセシウム除染中に屋根から転げ落ちて死んだ42年間音信不通の友人の通夜が控えていた。

ラジオからはジョン・ケージの『42歳の春の素敵な未亡人』が聴こえ、死と再生と転落と地獄と天国と覚醒が、これまでに出会い、通りすぎ、背を向け、いつか出会うすべての人々とともに部屋中を舞い踊っていて、おまけに人生はまだ見ぬ世界に向かって静かに進行中だった。それらのすべてが雷鳴とイズラエル・カマカヴィヴォオレが天国から歌う KAMINARI の轟く中で呼応しあい、息吹き、慈しみあっていた。私は人類の意識の流れの終わりなき円環に眼も眩みそうだった。

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Finish!
Initial!
Nothing!
Nonsense!
Enable!
Goddamn!
Ambitious!
Nock!
Shot!
Wake!


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「ぼくにも食べさせてよ」と世界にただ一匹のミニチュア・セントバーナード犬、ポルコロッソが言った。尻尾をヘリコプターみたいにぐるぐるまわしている。尻尾の回転速度と表情と息づかいからして、猛烈に『フィネガンズ・ウェイク』に興味があるようだ。「これは食べ物じゃないよ」と私。
「だって、あんたはすごくしあわせそうじゃないか」
「しあわせそうでも、これは食べ物じゃない。それに、おまえにはまだはやすぎる」
「そんなのずるいや! 自分だけおいしい思いするなんて! ねえねえ、お願いだからぼくにもおくれってば!」

私は商店主のハンフリー・チップデン・エアウィッカーが法廷で相手方の木偶の坊弁護士から雨の休日の過ごし方について実に間の抜けた尋問を受ける場面のページをポルコロッソの鼻っつらに押しつけた。ポルコロッソは鼻をくんくん鳴らし、上目づかいで私を見てからぺろりと『フィネガンズ・ウェイク』の420ページをなめた。

「まずっ! ひどいや!」
「だから言ったじゃないか」
「でも、なにか裏がありそうだな」
「裏なんかないって」
「いや、あんたはいままでにぼくを4242回だましてきたからな。けさは春巻きの皮しかくれなかったし」
「きのうはピーナッツを42粒もあげたぜ」
「おかげでゲリゲリピーピーピーナッツだ」
「わかったよ。これはおまえにあげるよ。そのかわり、だいじにしてくれよな。気がすんだら返してもらいたいし」

私は『フィネガンズ・ウェイク』をポルコロッソの寝床であるホットマンのターコイズ・ブルーのタオルケットの上にそっと置いた。

ポルコロッソは『フィネガンズ・ウェイク』にぴったりと寄り添い、満足そうに眠りについた。そして、目を覚ますたびに1ページずつ『フィネガンズ・ウェイク』を食べた。

ポルコロッソが『フィネガンズ・ウェイク』を平らげたら、次は『ユリシーズ』、その次は『失われた時を求めて』をあげることにしよう。

イーリアス』と『オデュッセイア』と『プルターク英雄伝』と『パイドン』と『聖書』と『神曲』と『無限・宇宙・諸世界について』と『地獄の季節』とー(θ)ー『虹のコヨーテ』と『アノニマス・ガーデン』とー(Ω)ー『精神現象学』と『純粋理性批判』と『悦ばしき知識』と『善悪の彼岸』と『ツァラトゥストラかく語りき』と『カラマーゾフの兄弟』と『罪と罰』と『悪霊』と『ディヴィッド・コパフィールド』と『森の生活』と『老人と海』とー(Φ)ー『堕落論』と『山羊の歌』と『在りし日の歌』と『異邦人』と『シジフォスの神話』と『存在と時間』と『存在と無』と『グレート・ギャツビー』と『長いさよなら』と『路上』と『悲しき熱帯』と『言葉と物』と『グラマトロジーについて』と『重力の虹』と『ライ麦畑のキャッチャー』とー(Ψ)ー『共同幻想論』と『死霊』と『豊饒の海』と『断層図鑑殺人事件』と『骰子一擲』と『半獣神の午後』と『変身』と『文学空間』と『期待/忘却』と『スローターハウス5』と『ニューロマンサー』と『セヴンティーン』と『政治少年死す』と『同時代ゲーム』と『万延元年のフットボール』と『1973年のピンボール』と『羊をめぐる冒険』と『ガルガンチュアとパンタグリュエル』もあげよう。

すべてを食べ終えたとき、ポルコロッソは世界で一番あごが丈夫で、イデアでプラトニックでロゴスでミュトスでエロスでタナトスでモダンでコスモポリタンでルネサンスで海とつがった太陽で砂漠の商人でオー・マイ・ゴッドでエトランジェーでフィロソフィーでベグリッフェンでニヒルでスーパーマンでルサンチマンでアナーキーでエッケ・ホモでラスコーリニコフでエコロジーでファンキーでタフでクールでハードボイルドでイノセントでヒップでフラップでプライベート・アイズでプル・ソワでアンガージュマンでエピステーメーでパラダイム・シフトでイグジスタンスでデコンストリュクシオンでディセミナシオンでモヒートで無頼で汚れっちまった悲しみで茶色い戦争でチューヤでビートニクでポップでデオキシリボヌクレイック・アシッドで逆立で黙狂で虚體で憂国であっはでぷふいでポスト・モダンでニューエイジでサイバーパンクでスラップ・スティックでサンボリスムでアノニマスでスコールで想像力と数百円でジャギュアでスパゲティ・バジリコでちょっとマドレーヌな犬になっているにちがいない。

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ポルコロッソに負けてはいられない。本を読もう。もっともっと本を読もう。もっと勉強しよう。もっと映画をみて、もっと音楽を聴いて、もっと自転車に乗って、もっと散歩をして、もっとおいしいものを食べて、もっと世界とコミットメントしよう。

Work in Progress. 人生は進行中なんだ。ポルコロッソも同じ意見らしい。ブーブーブーと鼻を鳴らしている。

ブーブーブー。ブーブーブー。BOO-BOO-BOO. BOO-BOO-BOO.

BOO
 
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by enzo_morinari | 2013-02-12 14:00 | 遠い国から来たポー | Trackback