カテゴリ:Blue Miles/Red Miles( 1 )

BLUE MILES/RED MILES #1

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 帝王には「青の時代」と「赤の時代」がある。ブルー・マイルス/レッド・マイルスだ。マイルス・デイヴィスはきわめて多面的な表現者であるから、類型化するのはいささか憚られるがあえてその愚を犯す。そうとでもなければマイルス・デイヴィスの全体像をとらえることができないからだ。BLUE MILES/RED MILESのほかにも、FREE MILESやらBLACK MILESやらがいるがそれはまた別の話だ。

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 歯科医の父と音楽教師の母。爺さんはたいへんな土地持ちだった。お金持ちのボンボンだったマイルス・デューイ・デイヴィス三世が本格的にジャズ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせるのは18歳の秋だ。16歳にしてすでに地元のバンドでプロフェッショナルとしてなにがしかの報酬をえてはいたが、小遣いていどのものにすぎなかったし、片手間仕事だった。1944年、イースト・セントルイスにビリー・エクスタイン楽団がやってきたとき、病気欠場したメンバーの代役としてステージに立ち、BIRD&DIZ、すなわち、チャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーとの共演を果たした。このときのことをのちに帝王は「バードとディズの演奏を聴いててもよ、なにがなんだかさっぱりわかんなかったってのよ、まったく。あの二人は完全にぶっ飛んでた。クレイジーだったぜ」と興奮気味に語っている。帝王の牧歌的な時代だ。ジャズ帝国の比類なき帝王、「恐怖の王」として君臨しはじめるのはまだずっと先、『KIND OF BLUE』まで待たなければならない。

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 帝王の音楽、表現をまともに受け止め、解釈するには長い年月と経験が必要だが、いずれにしても「音楽」だ。聴けばいいだけのことである。とっかかりは『Birth of The Cool(クールの誕生)』と『DIG』『Bag's Groove』がいいだろう。この3枚からは「牧歌的な牧童時代のマイルス・デイヴィス」を聴くことができる。BLUE MILESにコテンパンにされるまでの数年分の音源でせいぜいたのしんでおくことだ。日本独自のオムニバス盤だが、スタン・ゲッツ、リー・コニッツらとの競演音源が入った『CONCEPTION』は1950年前後にしてすでにコンセプチュアル・ジャズをやっている。たいへんなことだ。「牧童時代のマイルス・デイヴィス」が牧歌的なジャズ・デイズに別れを告げようとしていたことがわかる。しばらくは「牧童時代のマイルス・デイヴィス」の足跡と音楽をたどる。

【参考文献ほか】
Ian Carr/Miles Davis. ISBN 0-00-653026-5.
Jack Chambers/Milestones: The Music and Times of Miles Davis. ISBN 0-306-80849-8.
George Cole/The Last Miles: The Music of Miles Davis 1980–1991. ISBN 1-904768-18-0.
Richard Cook/"It's About That Time: Miles Davis On and Off Record". Oxford University Press. ISBN 978-0-19-532266-8.
Richard Cook and Brian Morton/Entry "Miles Davis" in Penguin Guide to Jazz, Penguin, ISBN 0-14-017949-6.
Gregory Davis/Dark Magus: The Jekyll & Hyde Life of Miles Davis. ISBN 978-0-87930-875-9.
Miles Davis & Quincy Troupe/Miles: The Autobiography. ISBN 0-671-63504-2.
Gerald Early/Miles Davis and American Culture. ISBN 1-883982-37-5 cloth, ISBN 1-883982-38-3, paper.
Howard Mandel/Miles, Ornette, Cecil: Jazz Beyond Jazz. Routledge. ISBN 0-415-96714-7.
John Szwed/So What: The Life of Miles Davis. ISBN 0-434-00759-5.
Paul Tingen/Miles Beyond: The Electric Explorations of Miles Davis, 1967–1991. ISBN 0-8230-8360-8.
Quincy Troupe/Miles and Me, The George Gund Foundation Imprint in African American Studies, 2002, ISBN 9780520234710.
Jean-Michel Migaux/Miles Davis: La MUSIQUE INFINI, 1990, ISBN425419581126.
Jean-Michel Migaux/Mort et Reproduction, 2001, ISBN3141592653589793
法水倫太郎 『帝王は倍音で笑う』(1988) 世紀末書舘
久生震弩乱『ぶうぃぃぃぃん/音楽以前』(1986) ドグラマグラ書房
吉田衛『マイルスに伝言/CODE M.D. の思い出』(1990) ベイサイド・ヴォイス
森鳴燕蔵『鳥の饒舌、帝王の沈黙』(1978) リヴロ・ル・クレジオ
Miles Davis at Find A Grave
Miles Davis – official website.
Miles Davis – official Sony Music website.
Miles Davis at Allmusic
Miles Davis collected news and commentary at The New York Times
Miles Davis collected news and commentary at The Guardian
Works by or about Miles Davis in libraries (WorldCat catalog)
Miles Davis's '70s: The Excitement! The Terror! — Robert Christgau, The Village Voice
 
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by enzo_morinari | 2012-12-13 06:00 | Blue Miles/Red Miles | Trackback