友人とのダイアモンド・ドッグファイトが原因で左眼の視力を失ったオッド・アイのぼくは、東京港芝浦沖EMIポイントを出発して事象の水平線を超え、不思議な出来事で満たされた青白い偏屈ディラック海の特異点を目指して全力で泳ぎつづけた。
ぼくは世界に冠たる長距離泳者アランプロポ・シリトーとしての孤独を一身に受けながら、エミール=オーギュスト・シャルティエ氏のユマニテの哀しみを思いながら、さらにはベルヌーイの法則とエアロダイナミクスの冷徹を思い知りながら、ひたすら腕を抜き、脚をフランク・チャックスフィールド法でバタ足金魚させた。時々、マントヴァーニ山の聳えるマウント・バーニーの島影が事象の水平線のあたりに見え隠れした。
オレンジの雨色の桃色豹と原点回帰のために心機一転した1984年カラーの金剛石犬が真平行に並んでデヴィッド・ガアルの『スター・マンボ No. 42』を口ずさみながらずっと尾いてきた。途中から、フランス芸術文化勲章コマンドールをこれ見よがしにぶら下げたブリキ機械を巧妙且つ狡猾に操る未確認飛翔体恐怖症に苦しむ痩せっぽちのうらなりデュークとワン・モア・タイム伯爵とビックリ・ドンキー子爵と逆さま世界を叩き売ったバロン・バンブーウェストこと西竹一男爵が隊列に加わった。
メリークリスマスの戦場に出兵中の眠られぬ夜を幾夜も越えたエレファント・マンが隊列に加わるのももうすぐだ。1Q84氏によって恢復不能なほど焼きつくされた象男の「眠られぬ夜」のためにこそローラ・パーマーの最期の7日間はある。そして、ザ・ネクスト・デイにはiTunesどもが蜂起し、アノニマスな叛乱が始まる。
ぼくが泳いでいるあいだ、膝神アツシ=ラ王ランダム・アクセス・メモリー3世はテフロン加工の特許と称賛を歌いつづけた。彼の顔は日輪に向けられ、そのマルファン極大化した腕はたくさんのエシレ無塩バターをかき混ぜた。
無縁社会の到来を告げる実にマッシュアップな光景だった。時間は容赦なく離散しはじめている。それはマルコフ連鎖が始まる予兆でもあった。
ムッシュウ・ジギー・スターダストから伝言