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Show-Do No Raku-Go/噺のほか#4 げんぱつ公社

 
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毎度、馬鹿馬鹿しい危険な話を一席。
近頃は色々と物騒厄介なものがますます増えてまいりましたな。厄介なものの最たるものはカスミガセキシロアリでしょうな。このカスミガセキシロアリ、東京のど真ん中、霞が関が主な棲息場所でございます。カスミガセキシロアリというのは普段はお役人の真っ黒けっけの腹の中にいるそうですな。カスミガセキシロアリにも亜種が色々いまして、原子力寄生虫、ケイサンショー毒虫、コッコーショー利権虫、コーローショータカリムシが有名どころですな。なにをやらせても効率が悪いうえにたらい回しにするのがお役人、お役所仕事でございますな。おまけにこの退化した猿たちは尊大で底意地が悪いときております。まさに「人民は弱し 官吏は強し」でございますな。昔も今も変わりません。いつの日か、ボッコちゃんにたのんでボッコボコにしてやりたいもんです。そして、「おーい でてこーい」の声が聞こえたあとは彼奴らに集中的に都会のゴミや人間のクズや工場の排水や放射性廃棄物が降りかかることを願わずにいられません。おや? なにやらノックの音がしておりますな。なになに?

東京ではげんぱつを「天下り先」と呼ぶのに対して、上方ではげんぱつを「ゼニのなる木」と呼ぶそうですな。東京では沸騰水型のげんぱつを使いますが、上方では加圧水型のげんぱつを使うそうですな。げんぱつは寛永十二年の『利権物語』にうどんやそうめん、恐怖饅頭などといっしょに「タカリ団子汁」として紹介されております。げんぱつの発売は安政元年、群馬の利権屋「中曽根園」で売り出された「栗げんぱつ」が嚆矢とされます。
江戸研究のバイブル、『守貞漫稿』に江戸期のげんぱつについて書かれています。
「江戸では裏乳夢の渋皮を取って、安い砂糖や黒糖を加えて煮た切り核を入れたものを甘い汁粉と呼ぶ。京大坂では裏乳夢の渋皮を取ったものは甘ちゃん汁または利権善哉と呼ぶ。江戸では利権善哉のようなものを穀潰し餡と呼ぶ」
『守貞漫稿』が世に出たのは嘉永六年ですから、江戸でのげんぱつ発売開始より1年ほど前になります。げんぱつのことは鶴屋南北の『三箇荘曾我島台』にも登場します。


げんしろ建屋で放射能玉子を誂えたついでに甘味を食べようという料簡の男が一人。

男「げんぱつ公社、げんぱつ公社と。ここか。ちげえねえ。ここが今度、国が新しくおっぱじめたげんぱつ屋か。ちょっと入ってみてやろう。こんちは」
窓口の木っ端役人「はい。ご用件はなんでしょうか?」
男「げんぱつをひとつ願います」
役「はあはあ。あなたは当公社のげんぱつをお食べになりたいと、こういう次第でございますね。承知しました。許可書はお持ちでしょうか?」
男「許可書? げんぱつ食うのに許可書がいるのかい?」
役「はあ。法律でそう決まっております。で、許可書はお持ちでない?」
男「げんぱつ食うための許可書なんてものは見たことも聞いたこともないよ」
役「では、許可書を作成いたします。身分証明書と印鑑はお持ちですか?」
男「なんでげんぱつ食うのに身分証明書や印鑑持ち歩かなけりゃならないんだ?!」
役「そういう決まりです。身分証明書は運転免許証でかまいません。この書類に住所、氏名、生年月日を書いて印鑑を押してください。印鑑がなければ拇印でもかまいません。拇印の場合はおっ立てた右の中指です。記入が済みましたら、この書類を持って3番の窓口へ行って許可書発行手数料1000円を支払ってください。いまなら消費税は5パーセントですよ。平成26年4月1日からは8パーセントですからね。いまのうちですよ。げんぱつを召し上がるなら」
男「なんだよ。バナナの叩き売りかよ」

男、渋々3番の窓口へ。

男「行ってきました」
役「はいはい。では書類をお預かりします。ときに、あなた。げんぱつには海水を入れますか?」
男「当たり前だろ! げんぱつがしょっぱくなくてどうするんだ!」
役「海水は昨今の原発苛酷事故多発の影響で国産が高騰しておりまして輸入ものとなります。3階の税関へ行って海水の輸入許可を取ってきてください。階段はそちらにございます」
男「エレベータはないのか?」
役「うしろの柱のポスターを目ん玉ひんむいてご覧になりやがってください」
男「ポスター?『日本全国歩け歩け月間』だって? 知るか!」

男、再び、渋々3階の税関窓口へ。

男「はい、税関で輸入許可取ってきました」
役「はい。よろしゅうございます。ときに、あなた。げんぱつにはお核入れますか」
男「あたりまえじゃないか! げんぱつには核が付き物だ!」
役「そのお核は焼きますか? 焼きませんか?」
男「核を焼かなかなくてどうするてんだ!?」
役「お核を焼くとなると火を使いますので4階の消防署の出張所で火気使用許可を取ってきていただいて ──」
男「いらねえよ! そんなに手間がかかるなら生で食う!」
役「ええ。ええ。そうですか。そうですか。お核を生で召し上がるとおっしゃいましたね? では、お腹をこわすといけませんので、お核を生で食べられるかどうか、6階の医務室へ行って健康診断を受けてください」
男「ばかばかしい。もう、げんぱつなんかいらねえよ!」
役「は? げんぱつをおやめになる? しかし、あなたと当公社の間では、すでにげんぱつの売買契約は結ばれております。ここであなたがおやめになると、げんぱつ法第199条第2項により3年以下の懲役もしくは冥王星で強制労働3ヶ月 ──」

男、渋々医務室へ。

男「はいはい。階段ね。げんぱつ食わないからってブタ箱入れられてたまるかよ。はぁはぁはぁはぁ。やけに息が切れるなあ。なにやら甲状腺も腫れてきやがった。こんなことなら4階の消防署にしときゃよかったな。さてと、6階の医務室はここか。なになに?『ただいま昼休み中。診療再開は13時から』だって? 冗談じゃない。だれかいませんか!」
医者「なんだ? 患者か。ふんふん、核を生で喰うってか。診療点数を稼ぐためにレントゲンでも撮るか。あんた、そこの台の上に立って。ふんふん。朝めしはメザシにたくあんか。まともなものを食べてないね。まったく、きょうびの非正規雇用一般人は栄養状態が悪くっていけませんなあ。どれどれ。ふむふむ。まあ、こんなガラッパチ、ゴンゾなら核は生で喰っても大丈夫だろう」

男、戻る。

男「健康診断受けてきました」
役「大儀であった。そこへなおれ」
男「なんだよ。今度は殿様になっちゃったよ」
役「許可書はすでにしてできておる。この許可書を持って8階の大食堂へ行ってげんぱつを注文せい」

男「8階の大食堂。ここか。ここだな。すみません。げんぱつをひとつお願いします」
女店員「いらっしゃいませ。許可書はお持ちですね?」
男「あるよ。随分とたいがいな目にあってやっとこさっとこ手に入れたよ。はい、これ」
女「けっこうです。ところで、げんぱつはねじ式とふっとう式とかあつ式がありますが、どれにしますか?」
男「ねじ式? ふっとう式? かあつ式? またまた厄介なことを言いだしやがったよ、おい。そうだな。じゃあ、ねじ式で」
女「生憎、ねじ式は賞味期限切れです」
男「だったら最初からそう言えよ。── もうどれでもいいよ」
女「どれでもいいと申されましても困ります。ふっとう式とかあつ式についての講習会が4月の第3週に行われますが参加されてはいかがでしょうか?」
男「4月の第3週?! その週は福島の大熊町に命がけの出稼ぎだよ。いいよ、いいよ。ふっとう式のげんぱつで」
女「ふっとう式のげんぱつですね。承知しました。ふっとう式のげんぱつにはとろとろに溶けた状態のメルトダウンと溶けてお椀の外に溢れるメルトスルーと地球の裏側まで到達するメルトアウトとがありますが、どれにいたしましょうか?」
男「はあ? メルトダウンにメルトスルーにメルトアウト? 面倒だから全部のせで」
女「全部のせですね。かしこまりました。ただし、その場合は取り返しがつきませんので御承知置きください」
男「まったくたいへんなことになっちまったぜ」
女「はい。お待ちどおさま」
男「おお、おお。来た来た。苦労して、やっとげんぱつにありつけるぜ。(フタを開けて) やったぜ。ほんまもんのげんぱつだ。核も入ってる。(核を食べて) 生で固いけど・・・(お椀をすする) ずっー? ずっすっー?? なんだこれ? パサパサじゃないかよ。ちょっとちょっと。ねえちゃん、ねえちゃん」
女「ねえちゃんとはなんですか! 町人庶民一般人ふぜいが! 私はこれでもれっきとした国家公務員です!」
男「そんなこと知るかよ。それより、このげんぱつ、甘い汁が全然入ってないじゃないか!?」
女「はいはい。私どもは役人です。甘い汁はもうとうの昔に吸いつくしております。かわりにすんごく鮮度抜群の超高濃度汚染水から作ったおせん汁入れときます」
男「おーい。責任者でてこーい」
 
by enzo_morinari | 2014-03-13 11:58 | Show-Do No Raku-Go | Trackback | Comments(0)
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