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祝婚歌-エピタラミウム 赤の他人になるバカ娘に寄す(ギャラは高えぞ)

 
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メリケン帰りのバカ娘よ。よくぞ文無し宿無し天涯孤独の表六玉風来坊を人生の同行者に選んだ。褒めてやる。これからはその文無し宿無し天涯孤独の表六玉風来坊小僧とともに物語を紡げ。もはや、おまえが焼いて喰われようと煮物にされようと糠味噌に漬け込まれようと、はたまた女体盛りにされようと、吾輩の知ったことではない。あとは野となれ山となれということだ。

さて、吉野弘という市井の人々に常にあたたかでやわらかな眼差しを注ぎつづけてきた市井派の詩人がいる。その吉野弘の詩、『祝婚歌』を香典もとい祝電がわりに贈る。まあ、吾輩からの卒業証書のようなものと思いたまえ。


祝婚歌 吉野弘

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと
気付いているほうがいい

完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい

立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったりゆたかに
光を浴びているほうがいい

健康で風にふかれながら
生きているなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい



吾輩の知りうるかぎりにおいて、世界でもっとも心さびしい誕生日とクリスマスをいくたびもすごし、口さがない世間の下衆外道どもに「妾の子」と陰口をたたかれ、世界でもっともくやしい思いに歯ぎしりをし、世界でもっとも手ごわい父親を持ったわが愛しきメリケン帰りのバカ娘よ。それでもなお、世界は素晴らしく、人生はバラ色だ。健闘を祈る。

それにしても、ヴァージンロードを歩く処女でもないおまえが吾輩に瓜二つの小動物を抱えているとはな。まったくもって世界は不思議不可解。ホレーショも藤村操も山崎晃嗣も吃驚だ。これにて、スベテ清算カリニケリ。さて、正餐の時間だ。


吾輩仕込みの理力とレンブラント光線のごとき光の息吹きがいつもともにありますように。
 
by enzo_morinari | 2013-09-26 16:31 | 伝えたい言葉、伝えられない言葉 | Trackback | Comments(0)
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