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真言の音楽#8 ジャズの神学 キャノンボール・アダレイ『Somethin' Else』

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黒いビニルのLPレコード時代。ジュリアン・キャノンボール・アダレイの『Somethin' Else』を合計22枚買った。すり切れ、針飛びを起こすほど聴いたからだ。22枚目の『Somethin' Else』は初発当時のものを忠実に再現した復刻版の重量盤だった。KING RECORD社製。それまでに聴いてきた『Somethin' Else』とは桁違いに音質が良かった。価格も高価だったが十分に納得した。紙ジャケットも実によくできていた。「オリジナルとコピー、レプリカのちがいの意味はどうなる?」という疑問を持つほどだった。案の定、シャレ、遊び心の欠如した「くそまじめな精神」を持つ音楽評論家センセイの何人かがスウィング・ジャーナル誌上などで噛みついていた。吾輩にとって『Somethin' Else』の復刻版は古きよき黒きビニルのLPレコードへの挽歌、レクイムの意味合いを持った。時代は急速に「デジタル化」へと歩みを進めたからだ。

エリック・ドルフィーの『Out to Lunch!』やジョン・コルトレーンの『LOVE SUPREME/至上の愛』がジャズ史上のみならず音楽史上の「事件」であるとするならば、ジュリアン・キャノンボール・アダレイの『Somethin' Else』はジャズ史上におけるひとつの「神学」である。この神学は「神学論争」をゆるさない。すでにして答えは出ており、疑念を挟む余地がないからだ。それほどに『Somethin' Else』は屹立し、完成されている。契約上の諸問題のために便宜的にジュリアン・キャノンボール・アダレイがリーダーとなっているが、実質的実体的に『Somethin' Else』はマイルス・デイヴィスのリーダー作品である。『Somethin' Else』は牧歌的なマイルス時代にとうに別れを告げ、ブルーでレッドなマイルスへ、いよいよ本格的にモードへと歩みを進めるマイルス・デイヴィスのマニフェストであり、里程標であり、金字塔である。60年近くが経とうというのに古くない。古くないどころか新しくさえある。聴くたびに斬新さ、鋭さ、滋味の発見がある。「『Somethin' Else』を聴かずにジャズについて語るな」とはかの植草甚一の至言である。然り。ジュリアン・キャノンボール・アダレイのパフォーマンスは「サクソフォーン奏者の王」の称号を与えるに値する。


Cannonball Adderley - Somethin' Else (1958)

【Personnel】
Cannonball Adderley - alto saxophone
Miles Davis - trumpet
Hank Jones - piano
Sam Jones - bass
Art Blakey - drums

Producer - Alfred Lion
Released: 1958
Recorded: March 9 1958. Van Gelder Studio, Hackensack
Genre: JAZZ-Hard Bop, Bebop
Label: Blue Note(BST 81595)


【Tracking List】
Side I
1. "Autumn Leaves" Joseph Kosma, Johnny Mercer, Jacques Prévert 10:55
2. "Love for Sale" Cole Porter 7:01

Side II
1. "Somethin' Else" Miles Davis 8:15
2. "One for Daddy-O" Nat Adderley 8:26
3. "Dancing in the Dark" Arthur Schwartz, Howard Dietz 4:07

*Bonus Track(1999)
6. "Bangoon" Hank Jones 5:05
by enzo_morinari | 2013-07-06 00:00 | 真言の音楽 | Trackback | Comments(0)
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